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2008年8月11日 (月)

無職の女性たちを淡々と描く。「プラナリア」

女流作家 山本文緒さんはこの『プラナリア』で第124回直木賞を受賞。
独特の鋭い人物観察眼による5人の女性の生き様を描ききった5篇の短編集。
さっと紹介すると。

「プラナリア」
ウラナリアとは、ウズムシとかの体調2~3センチの扁形動物。
OLだった春香は、乳ガンとなり乳房を摘出。癌との闘病で会社を辞める。しかし全てに無気力になり捻くれていく自分が嫌いになり・・。

「ネイキッド」
バリバリの凄腕女性経営者だった涼子は、突然の離婚を言い渡され全てを失い、気力も失って何をやってもやる気のない生活を送っていた。ネットカフェで時間を潰す彼女の前にかつての部下が現れた・・。

「どこかでないここ」
専業主婦だった真穂は、夫の突然のリストラで、深夜の安売り量販店でパートにでることとなる。自分と夫の老親の面倒み疲れ、言うことを聞かない子供達への苛立ち。慣れぬ職場での戸惑い。そんな中で自分を見つめ直してみると・・。

「囚われ人のジレンマ」
大学院生の彼から「結婚してもいいよ」と切り出された。25歳の美都は違和感を感じる。不倫、行きずりの恋とに悩みながらも結婚する気のない美都の前に現れたのは・・。

「あいあるあした」
企業戦士として家族に振り返ることなく働き続けた真島は、その家族を失った時に居酒屋へと転職をした。その店にやってきた宿無しのすみ江。その自由奔放な生き方に腹立たしくもいつの間にか惹かれていく。

いずれも〝無職〟の生き方を、その独自の切り口で、淡々としかしリアリティに描いていく。心の内の書き方がとっても上手で読みやすく、自己中な主人公のその平面的じゃない人物達の、ありのままの物語となっている。
明確なエンディングを迎える話はなく、中途半端な終わり方と言ってしまえばそれまでだけど、なにか見えてきそうな終わり方は、自分としては悪くない。

5篇のいずれも心に残った短編だが、特に「ネイキッド」に出てくる涼子と「あいあるあした」に出てくるすみ江には特に惹かれた。

女性の生き方なんて偉そうには語れないけど、心のひだを少し理解できた気がする、心に残る名著だと思う。

「プラナリア」 山本文緒著 9点 ★★★★☆

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