完璧すぎる悲劇のシナリオは冷静さを生む「余命」
結婚10年目にしてやっと子供を授かった外科医の滴(しずく)=松雪泰子は、カメラマンの夫 良介=椎名桔平と喜びを噛みしめるのもつかの間、乳ガンが再発してしまう。滴(しずく)は厳しい選択を迫られる。子供を諦めて治療するか、それとも子供を産むか。
どちらを選んでも我が子を大きくなるまでその手で育てることの出来ない滴(しずく)の苦渋の選択。しかしその選んだ結論を良平には話さなかった。全ての重荷を一人で背負いたがる滴を演じた松雪泰子の存在感・好演が特に印象的だった。
ただ、一緒に映画を観に行った人も「良い映画だよね」・・でも。感性豊かなその人ですら〝涙腺を刺激するほど悲しくないのはなぜだろう〟と同じ印象をもった。語り合ってるうちに徐々に感じたこと、それはあまりにも完璧に作り上げた非の打ち所のない悲劇のシナリオに、観る側に哀しみよりも冷静さが生まれてしまったのでは?ということ。
滴(しずく)のふるさと、奄美大島の空と海がもっと鮮烈な青と碧だったら・・。美しく明るい奄美の風景と、悲しすぎる滴の運命とのギャップを、観る者に感じさせたかったろう。しかし、なぜかどんよりとした奄美の情景が印象に残った。とてもいい話を松雪さんが素晴らしい演技をしたのに、ちょっと残念だったと思う。
「余命」 6.5点 ★★★
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