「小次郎と三たび逢う その時のために」バガボンド 30巻(井上雄彦)
吉岡一門との一乗寺下り松の死闘で傷ついた武蔵は、牢獄の中で身体を癒しながらも、自己を見つめ直す。天下無双を否定する武蔵に、後世に「五輪の書」を著す武蔵像の片鱗が見えてきた。
今までの戦いの中で、「勝ったのは自分なのか」自問する武蔵。
おつうにつきまとう亡霊という設定は、今までのリアリティーを求めていたバガボンドにはあり得なかった設定となった。亡霊に連れられて、おつうの見た悲劇の現実。それがおつうになにを与えるのか。
小次郎もまた新しい旅立ちの時を迎えた。しかしそれは、武蔵と三たび相まみえるための、船出でもあった。前巻までの荒々しいまでの「動」から、内面をえぐる様な「静」の展開となった本書。登場人物も顔を見せながら新展開への序章を彩る形となった。
じゃっかんスピードダウンした感もある本巻では、吉岡決戦で登場人物も読者も傷ついた心を癒すような、そんなゆったり感も。確かに20巻までの丁寧な書き込みも弱くなった気もするが、他のコミックとは一線を画した名作には間違えない。
心ふるわせて続編を待とう!!
バガボンド 30巻(井上雄彦)
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