信頼が友情を紡ぎ絆となり未来への道となる。「ゴールデンスランバー」
釣り道具を肩に大学時代の仲間 森田(吉岡秀隆)と仙台市内で待ち合わせた青柳(堺雅人)は、すぐ近くで勃発した首相暗殺爆弾テロの犯人に仕立て上げられ、警察から追われることになった。突然のことで事情もまったく分からぬまま、逃亡を続ける青柳だが、その逃げ道は閉ざされ袋のネズミ状態。
TVで流れるのは身に覚えのない犯人に祭り上げられた偽造の映像ばかり。青柳はテロ犯として警察からも発砲されてしまう。命も危険に晒されながら、無様に逃げまどう。警察もマスコミも犯人に決めつけた報道された中、彼の無実を信じるのはほんの数人のかつての大学の仲間と裏の世界の人間だけ・・。
仙台出身の人気作家・伊坂幸太郎のベストセラー作品を、あの大傑作「ジェネラル・ルージュの凱旋」の中村監督と堺雅人と竹内結子のトリオが取り組み、本作も大傑作に仕上がった。ただ最後にすっきり感がないという意見もあるかも、でも最後にバックに流れるニュースでその一部が感じ取れる。それで良いと思う。
「自分がその人を思い出したときは、きっと相手も自分を思い出してくれるさ」
人との絆がどういうものなのか、この映画は教えてくれる。大学時代の恋人 晴子(竹内結子)、今は人妻となっているが、青柳の行く先を信じて見えぬ支援を続ける、青柳と顔を会わすこともなく。その切なさが心揺さぶる。
青柳と晴子の絆は最後の最後でとっても暖かい気持ちにさせてくれる、たいへん良くできました、と褒めたい。その他にも父親(伊東四朗)との絆には胸を打ち、宅配会社の同僚との絆も洒落てる。そしてこの逃走劇の終着点は是非多くの人に観てもらいたい。そこには戻る道のない、未来があるのだから。
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最後にタイトルの「ゴールデンスランバー」とはもちろんビートルズのポール・マッカートニーの名曲だがその話を少し。
ポールの義理の妹ルースが、ある日ポールの前に1冊の童謡集を見せてこういった。
「ねぇポール、この曲を弾いて聞かせて。」
その曲は16世紀、劇作家のトーマス・デッカーによって作られた賛美歌「ゴールデン・スランバー・キス・ユァ・アイズ」であった。その賛美歌の歌詞に興味を持ったポールはその歌詞に1節手を加えて作り直し名曲が生まれた。
Once there was a way to get back homeward
Once there was a way to get back home
Sleep pretty darling do not cry
And I will sing a lullabye
かつては、そこに故郷に帰る道があったはず。
かつては、そこに我が家に帰る道があったのに。
可愛いお前、さあお眠り。もう泣かないでね。
僕が子守歌を唄ってあげるから。
Golden slumbers (Lennon/McCartney 原詩マザーグース)
贅沢いえば、ポールの歌声でのゴールデンスランバーが聴きたかった。。。
「ゴールデンスランバー」 9点 ★★★★☆
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