沼地を愛する川魚は清流に出ることを怖れて「パレード」
映画会社勤務で几帳面な直輝(藤原竜也)を中心に、自称イラストレーター雑貨店勤務の未来(香里奈)、無職で恋愛依存症の琴美(貫地谷しほり)、今どきの大学生の良介(小出恵介)の4人は、都会の2LDKマンションで共同生活を淡々と送っていた。そこにある日謎の少年サトル(林遣都)が転がり込んできた。
「嫌なら出て行けばいい、いたいなら笑っていればいい。」近所では女性連続暴行事件も多発していて騒がしくなったり、隣の部屋では売春宿となってると疑いをもったり。彼らの生活は、お互いが無関心で立ち入らないルームシェアの関係。今まではそれでうまくやっていたはずの日常が徐々に歪み始めていった。
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原作は山本周五郎賞受賞作(吉田修一著)だそうです。こんな会話がありました。「そうだな、ネットのチャットのような関係だな」好きなときに関わって、でも責任が存在しない関係でしかない同居人。表面的な付き合いでそれ以上を望まない関係。「あなたは隣に居る人の本当の姿が見えていますか?」
最初は彼らの日常を断片的に見せられて、なかなか話の中には入っていけなかった。見終わった後、心の中がドンヨリとして、すっきりとしてきません。このドンヨリとしたのは私の心の中だけではなく、彼らの生活している空気でもあると気づきました。彼らはこのまったりと濁った空気を壊したくないのです。
都会のルームシェアする4名の心の闇を見せつけられ、でも彼らはそこからは決して出てこられない、彼らはあの空間の環境を愛し、薄っぺらだけど居心地の良い人間関係の中で、今までもそしてこれからも過ごしていく淀んだ沼地に住む川魚のよう。この映画では心地よい完結性を求めてはいけないだろうと思う。
パレード 6点 ★★★
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