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2012年3月の4件の記事

2012年3月31日 (土)

『戦火の馬』

第一次世界大戦下に激しく揺れる英国・仏国・独国で、
その飼い主が変遷しながらも生き残るジョーイの数奇な変遷を描く。

なんでも大戦当時は、戦争に100万頭駆り出された軍馬のうち
生き残ったのはわずかに6万頭だとか。
それだけ馬にとっては過酷な試練の時代だったのだ。

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農地を耕し、戦場を疾走し、また坂道で大きな大砲を引くジョーイ。
駆り出された仲間の馬はこき使われ、やがて次々と斃れていく。
それを見つめるジョーイ。

そんな彼の目に映るのは、人間たちの愚かな修羅場のみではなかった。
その先に見える雄大な自然は美しく、
それを慈しむように見渡すジョーイの視線は悲しい。

戦争の悲惨さと痛々しいまでの人間の愚かさが、自然の美しさを
際立てて描くことで、一層醜いものと観る者の目に映ってくる。
そんな激動の時代に、ジョーイに関わる人間模様もまた興味深い。

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見終わって、「ああ、映画とはこういうものだ」
そんな感動を与えてくれる作品だった。。

『戦火の馬』

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2012年3月30日 (金)

『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』

歴史と格式を重んじる英国で女性として政治家になることの困難さ、
しきたりと前例を尊ぶが故の英国の軋轢に立ち向かうには
強い信念をもつしか道が無かったのだろう。

英国の危機に立ち向かう揺るぎない〝鉄の女〟サッチャーと、
老いて夫の亡影とともに生きる〝孤独の老婆〟を
見事に演じたメリル・ストリープの本当に素晴らしい演技こそ必見。

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言ってほしいことがあれば、男に頼みなさい。
やってほしいことがあれば、女に頼みなさい

まさにサッチャーの政治家の信念を表わす言葉通りに
誇り高き英国の再建のために
保守的男の議員たちと闘い抜いた、
または〝鉄の女〟の役を政治の舞台で演じ切った、
一人の女性の光と影をみた。

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『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』

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2012年3月 6日 (火)

『ライアーゲーム -再生-』

突然送りつけられる招待状により、見知らぬ者同士 多額の賞金欲しさに
参加者がお互いを騙し合うライアーゲーム。

天才詐欺師秋山松田翔太)がそんなライアーゲームに挑み続け、
ついにはゲームの出資者たちに多大な打撃を受えたファイナルステージから
2年が過ぎていた。
組織も崩壊し、すべてが終わったように見えたライアーゲームだが、
実は事務局は再度復活を果たしたのだった。

そして今では大学で心理学の教鞭をとっている秋山への復讐を果たすべく
秋山を誘い出し潰そうと、その教え子の一人を狙い定め、それを餌にして・・・。

今回のライアーゲームは「イス取りゲーム
総額20億円をかけて20人の参加者が争うのだが・・。
単純なイス取りゲームではなく、これはお互いが騙し合う国取りゲームだった。

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****************

この映画の魅力は何と言っても秋山のクールすぎる頭脳と行動。
人を小馬鹿にしたような微笑、何を考えているのか分からない怖さ。

いやぁ、かっこいいねぇ。これは今回の映画でも変わることのない魅力。
今回も新しい参加者相手にヒリヒリした頭脳戦を繰り広げる。

ただ、今回からはあの「オバカな直ちゃん」が出てこない。
やはりこの映画。
秋山と直ちゃんは光と影のような存在
どちらが欠けても輝きが弱くなるし影のない薄っぺらなものに
なってしまうのだね。それが観て実感。

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そして。
ライアーゲームは一種の毒に侵されているような、痺れるような
麻薬的な心地よさみたいなものがある。
しかし、今回のライアーゲームでは、
舌っ足らずな芦田愛菜ちゃんの起用でどこか後ろめたいものが薄れ、
最後は毒気の抜かれたような・・・で(若干ネタばれかも?)、
これまたどこか炭酸の抜けたジンジャーエールみたいな甘さが残った。

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今までのライアーゲームの延長では『再生』の意味がないので、
思い切って色々と変えてみようとした結果だと思うし、それによって
問題点も改善点も見えてきたんじゃないかな。

あの『秋山』の魅力をどうやって輝くものにするのか、
このライアーゲームの世界観の、ヒリヒリした麻薬のような、観る者の
頭脳を麻痺し刺激するのか。
もし、次回作があるならそこら辺は期待したいな。

色々と不満も書いたけど。観て良かったです。面白かった。

『ライアーゲーム -再生-』

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2012年3月 5日 (月)

『ヒューゴの不思議な発明』

1930年代のパリ。
パリの街の中心にある駅には街を一望できる大きな時計台があった。
そしてその時計台の中には人知れずひそかに孤児の少年ヒューゴ
エイサ・バターフィールド)が住んでいた。

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彼は時計台の中からにぎやかに駅の中を行き来する人々の姿を眺めていた。
そして彼の目に留まったのは、駅の構内でおもちゃと時計の修理をするお店。
そこにはまどろむ老人店主(ベン・キングズレー)がいた・・。

老店主の寝ている隙におもちゃのネズミをヒューゴが盗ろうとしたその瞬間!
ヒューゴはその腕を掴まれてしまう。
彼のポケットからは多くの歯車・ギア、そして1冊のノート。
そのノートの中をみた老人の顔色が変わる・・。

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時計台に隠れ住んでいるヒューゴ。
その大仕掛けの時計の中では、孤児であることを忘れることのできる、
彼だけの空間・大切な場所なのだ。
社会から隔離されたかのようにそこに籠り、父との繋がりの機械人形に
だけ心を許す生活を送っていた。
その現実逃避の世界を打ち壊したのが、老人パパ・ジョルジュ
少女イザベルだった。

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彼が唯一大切にしていたのは、父が遺した壊れた機械人形。
これを修理することが亡き父との想い出であり、父との唯一の繋がりであった。
しかしそれは一人の偉大な映画人の人生を掘り下げていくことになっていく・・。

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映画のタイトルには「不思議な発明」となっているが、これは発明ではなく、
修理なのだ。
そしてヒューゴのした修理は機械人間の修理だけではなく、戦争によっ
て夢を打ち消されてしまった老人の心も繕ろい、そして笑顔を取り戻した。

無声映画の黎明期に偉業を残しつつも時代の変遷と失望の中に心を
閉ざしてしまった老人とそれと付き添ってきた妻の作品の数々は、
万華鏡の様に煌びやかで輝いていた。

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とても優しい映画だ。
そして映画は観る人を楽しませる手品、マジックだということ。
人を驚かせ、そして多くの夢を与える映画への深い愛がこの映画には満ちている。

観終わった後、昔見た映画をもう一度観てみようかな、
そんなノスタルジックな気持ちにさせてくれる。

『ヒューゴの不思議な発明』

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